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笹幸恵
2023.4.6 09:58皇統問題

倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【12】

倉山満『皇室論』。
明らかな事実誤認、支離滅裂、意味不明が多すぎる。
もう絶望的な支離滅裂さ(わかっちゃいたけど)。
今回は12回目。

第4章で、自身の先例原理主義の理由を
「大学の先生が言っていたから」だと
明かした倉山、
「最も大事な先例は、皇位の男系継承」
「男系継承を続けるとは、日本の歴史を続ける
ということ」だと断言している。
そして、過去の「皇位簒奪の目論見」として
弓削道鏡と足利義満の話が出てくる。

(道鏡の要旨)
弓削道鏡は宇佐神宮の神託があったとして
天皇になろうとしたが、和気清麻呂が
「君臣の別をつけよ」と神託の真意を確認したので
阻止できた。
現代の「男女平等だから、皇位は男女関係なく
長子相続にすべきだ」という主張は
道鏡の「神意だ」という主張と同じようなもの。

→なぜ2つの主張が同じとなるのか、
さっぱり意味がわからない。
そう判断した理由も示されていない。

(義満の要旨)
義満は最高権威を手中にしようと
南朝から三種の神器を巻き上げ、
先例を踏まえ大枠を壊さない形で
「乗っ取り」をはかった。
自らを法皇に准じさせ、
妻を准母とし、息子を親王の形式で元服、
死後に朝廷から「太上法皇」の尊号が贈られたが
幕府は辞退。
生きたまま皇族になった民間人はいないが、
死後まで含めれば義満は唯一の例外。
女系論でも義満のように先例を熟知して
主張している人がいる。

→「そういう人がいる」というだけで、
それがどんな主張なのかは示されていない。
そもそも幕府は辞退したのに例外扱いとして
いいのかナゾ。
しかも清和源氏の流れをくむ義満を民間人とするなら、
旧宮家の男系男子も民間人ではないか。
民間人ならば、憲法第14条の法の下の平等が
保障されなければならない。
何人たりとも、その権利を取り上げてはならない。

にもかかわらず、倉山はこの後、憲法14条
「門地の差別にあたる」という指摘に対し、
こう反論しているのである。

女性が皇族と結婚するという特定の条件で
法の下の平等の適用外になります。
同じように、旧皇族の方々も血統という、
憲法第一章に規定された特例によって
第十四条の法の下の平等の例外になると
いうことです。

「血統」で第14条の例外になるなどと、
とても正気の沙汰とは思えない。

過去において「民間人」であった義満は
皇位簒奪を目論んだと断定する一方、
現代において「民間人」である旧宮家男系男子は
その血統において法の下の平等の例外であり、
現代においてありもしない「親王宣下」で
皇族になればいいなどと吹聴する。
ご都合主義、ここに極まれり。

本当にもう、細かいことにツッコミを入れていったら
キリがない、何から何まで自分の知識のひけらかしと
思い込み、整合性のとれない主張のオンパレード。
自らの読解力を疑う知性も持ち合わせていない。
挙げ句、性別でも血統でも人を差別して、
その自覚もない。
救いようがない。

【過去のブログはこちら】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【1】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【2】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【3】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【4】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【5】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【6】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【7】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【8】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【9】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【10】
倉山満『皇室論』のトンデモ言説を深掘りする【11】

笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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